術後下肢リンパ浮腫への運動-浮腫の改善と筋力アップのバランス-
子宮体がん、卵巣がん、子宮頚がんの外科的治療により、病巣周囲のリンパ節郭清(リンパ節の切除)をされた方が発症しやすい病態として
「術後下肢リンパ浮腫」
というのがあります
術後リンパ浮腫は、下肢以外に
上肢にも起きることがあり、これは乳がん術後のリンパ節郭清により発症リスクが上がります
リンパ浮腫発症率は、
婦人科がん手術でリンパ節郭清をされた方のうち30-35%
乳がん手術でリンパ節郭清をされた方のうち10%
と、下肢の方がリンパ浮腫発症率が高くなります
下肢リンパ浮腫を発症すると、
片側または両側の脚・陰部・臀部に厚みが出て、太くなったような状態になります
リンパ浮腫の特徴は、脚の場合にも、太くなっているところと、そうでもないところがあり、「局所的」で浮腫の度合いに違いがみられることです
リンパ浮腫の症状が悪化していくと
・浮腫が硬くなる(指で押したら跡がついて消えるのに時間がかかる、更に悪化すると押しても凹まなくなる)
・患部の皮膚が乾燥しやすくなる
・患部の皮膚が硬くなる
などの形状的変化が出てきます
基本的ケアは6つ挙げられます
・圧迫
・挙上
・運動(圧迫下での関節を曲げ伸ばしする運動)
・スキンケア
・体重管理(主に体脂肪率)
・リンパドレナージュ
このうち、リンパドレナージュ以外を本人が管理できるようになっていくことが理想的なケアです
更にお伝えしておきたいのは、リンパドレナージュ以外のことこそが、リンパ浮腫ケアとしてとても重要なポイントになってきます
医療機関内のリンパ浮腫外来などでは、それらケア方法についての指導を受けることができます
また、医療機関外ではリンパ浮腫ケア専門のセラピストがいる施術所・サロンなどで適切なケアや管理方法を、実際に施術を受けながら教えてもらうことができます
リンパ浮腫かも?と感じたら
まずは、主治医(がん治療の担当医師)に投げかけてみてください
しかし、医療機関というのは
毎日ものすごい患者さんが来院されるため1人当たりの診療時間は短くなりがちで、患者側も話しにくさを感じて中々相談できない、ということもあるかと思います
その場合には、看護師に相談してみてください
看護師の中には、リンパ浮腫ケアについて学ばれている方も多くいらっしゃるので、お話をしてみられたら、解決策の提案や相談先の紹介をしてくれる場合があります
恐れずに聞いてみてくださいね!
前置きが長くなりましたが、そんなリンパ浮腫へのケアの1つとして「運動」を今回は掘り下げていきます
リンパ浮腫に運動が効果的な理由
・筋ポンプ作用によりリンパ液が流れやすくなる
リンパ管には能動的に収縮する機能がある(自らの力で動く力がある)のですが、その作用はとても弱く、動きのほとんどを周りの筋肉や動脈に委ねています
つまり、筋肉が動けばリンパ管も動く
ということです
筋肉の動きにも色々とありますが、今回は置いておきましょう
今回は、下肢リンパ浮腫の改善経過に合わせて運動で気をつけなければいけないポイントを押さえていきます♪
リンパ浮腫のある人の運動時によくある悩み
①患部やその周辺の関節が痛い
②浮腫が増える
①患部やその周辺の関節が痛い
こちらは、浮腫の状態により痛みの原因にも変化が出ていると考えられます
【かたい浮腫の場合】
関節の動きもあまり良くなく、常に浮腫にかたさがあり痛みがある場合です
この場合は、リンパ液の貯留が多すぎて(リンパが沢山漏れて溜まっていて)、さらに蓄積された脂肪もあり、患部のあらゆる組織(筋肉、靭帯、腱、神経、微細な血管など)に圧迫が強くかかるため痛みを生じていることは、考えられることの1つ
または、リンパ浮腫のかたさによって関節の動きが制限されてしまい、本来動くべき方向とは少しずれた動きをしており痛い
なども考えられます
【やわらかめの浮腫の場合】
少し改善をされてきて、関節の動きも良くなってきた頃に痛みが出た場合です
この場合は、関節のギブスみたいになっていた浮腫のかたさが弱まり、やわらかくなったことで天然のギブスが外れて関節を固定するものがなくなったことで痛みが生じたということが、考えられることの1つ
私たちは常に重力に対抗して体を立たせて、歩いたり動いたりしています
その重力に対抗する力がリンパ浮腫により弱まっていて(それまでは筋肉や筋膜の働きを使わずにともギブスのような浮腫のかたさがあったから)、リンパ浮腫が改善されていく段階で、筋力アップとリンパ浮腫改善のスピードバランスが合っていない状況になるのです
また、冒頭でもお話したように
リンパ浮腫は「局所的」に浮腫むのが特徴です
例えば下肢リンパ浮腫の場合には
・太ももはリンパ浮腫が強い(かたい)が、膝から下は弱い(やわらかい)
・太ももはリンパ浮腫が弱い(やわらかい)が、膝〜ふくらはぎは少し強め(かため)で、足首から先が顕著(最もかたい)
など、人それぞれ状態が異なります
そうなると
同じ「スクワット」をする場合にも
かたい浮腫のあるところ
やわらかめの浮腫があるところ
それぞれ、関節の動きの制限度合いが変わってきたり、本来動くべき関節の動きとはズレてしまったりすることが多々あります
このようなことが十人十色の下肢リンパ浮腫で起きるので
リンパ浮腫の改善スピード、度合い
と
関節可動域の改善、固定する力
それぞれのバランスを整えていく必要がありますね
どのくらい(関節をどれくらい、どのように曲げたり伸ばしたり)動くのが良いのかをセルフで判断していくためにも
ふだんから動く習慣をつけておくと
自分の身体について知れて良いでしょう
動くといっても
いきなりスポーツをしたり、ランニングしたりしなくてよく簡単なことから初めてみましょう
・まずは歩く距離を増やすこと
→5000歩/日以上、歩いてますか?
・階段を使ってみる
→数段からでもいいので、痛みがあまり無い時は上り下りする
・トイレに行ったら屈伸をする
→オススメはトイレに行く度にスクワット10回する
これなら、どれか出来そうじゃないですか?
やれる時に、自分の「できる」を見つけて
増やしていってあげてください
運動は、私たちの明るい部分を見せてくれるものなのです
②浮腫が増える
運動後は
リンパ浮腫が増えてないかな?
赤みが出てないかな?
と必ず、こまめにチェックをしてください
翌日には引いて、元に戻っているようであれば、あまり心配する必要はありません
もし、翌日にもリンパ浮腫が増えた分が引いてない場合には、これらのケアをしてみてください
・運動中の圧迫を強める
・運動後も着圧ストッキングを直ぐには外さないようにしてみる
・運動後にはリンパ浮腫のあるところに冷水シャワーや氷水を当てるなど冷やす
それでも引かない場合は、今の体にはオーバーワークということなので少し強度を下げ、運動時間を短くして調整してみましょう
翌日にはリンパ浮腫の状態が元に戻っているくらいで、ややキツイくらいの運動を続けていくことが
リンパを鍛え
筋肉を鍛え
骨を守ることに繋がります
やれることから、ちょっとずつ
楽しんでいきたいですね
最後までお読みいただき、ありがとうございました