先日、リンパ浮腫専門クリニックの診療見学へいってきました 

見学させていただいたのは、東京都の代々木駅近くにある「むくみクリニック
院長の三原誠先生が2023年4月に開業されたリンパ浮腫診療を専門とするクリニックです

三原先生とは、間接的にご縁があり
昨年の日本リンパ浮腫治療学会で初めて対面でのご挨拶をさせていただきました

リンパ浮腫の治療には保存的治療と外科的治療があり、比重が高く置かれるのは保存的治療です。蜂窩織炎という感染症による炎症の頻発などがある場合に、外科的治療を検討されることもあります。外科的治療の中でもLVA(リンパ管静脈管吻合術)の技術は日本は世界でも最先端と言え、日本におけるリンパ浮腫への外科的治療の特徴の1つでもあります

そんなLVAを実行する前はリンパ管の機能状態を見極めオペに備えるために検査をします
その検査にもいくつかあるのですが、オペ適応があるか(LVAは誰でもどんなリンパ浮腫状態でも行えるのではなく適応の病期や状態というのがあります)をエコー検査で診てくださる医師の1人が、三原先生

エコー検査は薬剤不使用で時間もかからないので患者さんへの負担が少ないのがとても利点となる検査方法です

リンパ浮腫への治療では、保存的治療が重要視されます
というのは、もしLVA適応がありオペを実施することになっても、オペ後にもセルフケアでの圧迫や状態管理(体重管理やスキンケアを含む)を継続して行い、リンパ浮腫とつきあった生活をしていく必要があるからです。リンパ浮腫はオペをして治るものではなく、基本的には一生お付き合いをしていくものなのですね

一生付き合うのか、と重荷に感じられることもあるかと思いますが
一生ずっと、悪い状態が続くわけではなく、ご自身の体質の1つにリンパ浮腫という癖が加わったと捉えていただけると良いかと思います。リンパ浮腫があるからといって出来なくなることばかりではなく、きちんとしたセルフケアや保存的治療ができるようになってくると、出来ることの幅は広がり、生活の質も上がっていきます

リンパ浮腫がない状態でも、本来は日々の生活でマイナスになった身体負債を返済しなければいけないはずなのに、なんとなく不調が感じられないから負債を積み続けることがあります
そういう意味では、少し厄介者のリンパ浮腫ではありますが、ご自身に興味を向けてあげるきっかけにもなるのではないでしょうか

例えば、保存的治療を続けていき、セルフケアでの管理が上手くいくようになってきたとして
何かをきっかけに状態が悪化することも考えられます
蜂窩織炎という炎症を頻発する、蜂窩織炎によりリンパ浮腫が悪化する場合に、LVAは検討され適応であれば実施することで長期的にみたときにリンパ浮腫をより良く管理する、というのが外科的治療の捉え方です

私自身は、リンパ浮腫患者さんへの施術に携わるようになってから、
リンパ浮腫への保存的治療であり基本ケアの大原則の中に「(圧迫下での関節屈伸を伴う)運動」があるということを1番初めに学びました。なぜなら、リンパ管は能動的な動きはあるもののその作用はとても弱く、血脈拍にのって動かされ、そして筋収縮(筋ポンプ)作用では何十倍もリンパ管の動きが促進される、というのがリンパが流れるための基本だからです

しかし
筋肉を動かした方がいいのに、

「運動(トレーニング)は禁忌」
というのも大原則のように言われることに大いなる疑問をもっていました

だって、「運動」ってとても汎用性が高く
種類も強度も豊富
筋収縮にもタイプがあり
筋収縮は神経の働きも伴う

だから、禁忌である意味が知りたかった
リンパの流れを最も促進する要素は筋収取なのですから
運動の何が「禁忌」と言われるのか?

そのような大きな疑問を抱いたまま臨床にあたり続けた結果
やっぱり運動をしてほしい!
本当にリンパ浮腫をよくするために動ける身体になってほしい!
と思い立ち、私がやろう!とBOSを始めたわけです

リンパ浮腫患者さんは、術後リンパ浮腫になるより前に、がん治療を乗り越えてきた又は治療中であり、心の余裕もないままに「運動しよう!」と言われたら大きな大きな壁に感じるだろうことも臨床現場で嫌というほどみてきました

どうしたら運動のハードルが下がるかな?
「痛み」「辛い」身体記憶を薄めながら、動ける身体にシフトしていく方法はあるかな?
と、BOSを始めながら研究も続け

まだまだ研究中ですし、終わりのない学びなのですが

運動は「痛い」「辛い」ものではなく
楽しく、心身のネガティブをポジティブに変えていくもの
自分の「できる」を1つずつ発掘して、目を向け、大事に磨き上げてあげる
そんな素晴らしいものであることを、BOSは女性がんサバイバーでありリンパ浮腫を抱える女性たちにお伝えしたいのです

ただこれって、中々に理解されないんですよね
なぜなら、リンパ浮腫は未解明のことが多いのも大きな理由の1つ

がん再発リスクを考えても運動は効果的である研究報告は海外で沢山上がっており、
上肢への医療用弾性スリーブを着用したウェイトトレーニングはリンパ浮腫リスクを下げることも報告されています(下肢リンパ浮腫にはエビデンスなし)

リスクを負えるのか?という葛藤は常にあるのだけど
私の強みは、リンパ浮腫への保存的治療の臨床経験があること
エビデンスの不足するものには経験でカバーしていくしかありません

そして何より、基本に忠実に心身を捉え
その「人」と対話をすること
これに尽きると思うから、理解されなくても運動を推奨しています

むくみクリニックの三原先生は、私が運動療法に取り組んでいることを励ましてくださり
「応援してます!!!」
と何度も何度も、言ってくださりました

それと同時に
「(リンパ浮腫患者さんへの)運動は中々理解されないけどね。苦笑」
ということも何度も仰っていました

そうですよね????!
と、私は安心してしまいましたよ

乳がん経験者への運動サービスは以前より増えている印象ですが、
リンパ浮腫のある方への運動もケアも一括で専門的にみてくれる所はまだまだ少ないです
運動だけでは不安だし、ケアだけでは生きるその先までの道筋が足りないのに、どちらかしかないなんて患者さんにとっては負担であると感じます

しかも時間をかけて、じっくりと寄り添うサービスは少ない
細かく目を見張らなければ、リンパ浮腫患者さんへの運動はとても難しいことであるのは確かです
1人1人の状態がまるで違うからです

三原先生から、「理解されないけどね」
という言葉が安心材料になった私は
なんだかんだで不安があって孤独だったんだなぁと実感しました

BLUE ORGANIC SPACEを始めた頃は、もちろん不安だらけで
社会的需要があるかの利益度外視で、目の前の患者さんに良いことを医療者として伝えたいという想いだけで始めてしまい、リンパ浮腫への運動サービスは早すぎたかなぁなんて心折れかけた(たぶんほぼ折れてた笑)こともありました。そんな頃に、光を当ててくれたのは企業様たちでした

がんサバイバーへの有益なサービスを提供する企業様たちはアンテナが高く
がんサバイバーへの運動?乳がんヨガって何?リンパ浮腫改善のためのヨガ?運動?コンディショニング?
と、興味をもってくださり

それから、亀の歩みですがお問合せいただく機会も増え
セッションの数も増えてきました

そんな今でも
常にリスクを背負うだけの学びをし続けること
確かな情報と技術を届けること

本当に、私の声は誰かのためになっているだろうか?
BLUE ORGANIC SPACEの目指す、女性がんサバイバーへの包括的ケアの中に「術後リンパ浮腫」への対応も専門として取り入れたこのサービス概念がスタンダードになる日がくるんだろうか?

という漠然とした不安があったのだと思います

医師が理解を示してくださり
応援の言葉をかけてくださり
世間では理解されないことを教えてくださった

これは、私には大きな活力となりました
ありがとうございました

BLUE ORGANIC SPACEでは、保存的治療を継続されている方でも、LVAの検討が必要な状態に差し掛かった方には医療機関の受診をすすめています

私たちセラピストは診断ができません
きちんと診断をうけることが必要なとき、オペの検討がより良い生活をつくる可能性があるときは
医師の元へ行くことをオススメいたします

むくみクリニックのスタッフの皆さんは、とても明るくて
患者さんへ丁寧に接する姿に
チーム医療っていいな、と思えるとても素敵なクリニックでした
また見学にお伺いしたいと思います

BLUE ORGANIC SPACEのパンフレットも置かせていただき
当サロンにも、むくみクリニックのパンフレットがございます

地味な学びと活動は続きますが(笑)
これからも、がんサバイバー・術後リンパ浮腫のある方の心身を磨き上げるお手伝いをしていきたい

強い、強い、エナジーをいただいた貴重な時間でした

最後までお読みいただき、ありがとうございました