乳がん術後や婦人科がん術後、肩の可動域が狭くなる、お腹がなんとなく痛くて伸びにくい、などのお悩みをよくお聞きします。

これらの状態に対しては、「リハビリ」と言われる領域の筋・神経・皮膚の回復を促すアプローチをしていきます。

その「リハビリ」と「むくみケア」をセットに考えてみませんか?というアプローチを今回はお伝えしてみようと思います。

術後リンパ浮腫は、乳がんや婦人科がん(その他リンパ節へ処置を施す治療タイプの病気)の手術により、リンパ節を切除・郭清したあとで発症する可能性がある病態です。

原発性(先天性)リンパ浮腫もありますが、今回は二次的に発症する術後リンパ浮腫に焦点を置いて話を進めていきますね。

さて、なぜリハビリとむくみケアを同時進行で考えると良いのか?ということから、お伝えしていきたいと思います。
まず、このアイデアの源は、きちんとした構造的・機能的リハビリが行われることは、むくみ予防になり得るという点にあります。あくまで可能性の話であり、発症時期や環境が明確化されていないのが術後リンパ浮腫ですので、その点もお忘れなきよう読み進めてくださいね。

話は戻ります。
-構造的・機能的に動くからだは、むくみにくい-
このアイデアを聞いてなんとなく分かる気がするような、しないような、といった感じでしょうか。
術後リンパ浮腫への保存的治療の側面から、このことについて紐解いてみたいと思います。

術後リンパ浮腫に対する保存的治療の6つの要素
・圧迫
・運動
・体重管理
・スキンケア
・リンパドレナージ
・挙上

徒手で行うリンパドレナージでは、リンパの流れを促進させることを手でサポートします。
BOSでは、リンパドレナージなどの複合的理学療法を行う際に気を付けていることがあります。

それは、リンパ浮腫の状態の良し悪しを判断する材料の1つである「浮腫の硬さ」の鑑別です。
つまり、その「(患部の)むくみ」≒「硬さ」は何由来なのか?という点です。

なぜこれが重要なのかというと、術後リンパ浮腫には病期(ステージ)があり、良くない状態では硬いむくみとなっていきます。
これは患者様にもリンパ浮腫そのものの理解やご自身の状態を把握していただくために説明をする場合が多いと思います。BOSでも必要なお客様へは必ずお話をします。

硬さのある状態の場合には、特に鑑別をしていく必要があると考えています。
※BOSの考え方です

術後リンパ浮腫を発症し、張りや硬さがあるとき=(広義的にみた)患部の硬さがあるとき、それが浮腫による線維化や脂肪量増加などによるものなのか、他に素因があるのかを見分けていく、その”見分ける”ことを専門用語で”鑑別をする”と言います。

例えば、前腕(肘~手)に術後リンパ浮腫を発症したとしましょう。
前腕というのはそもそも張りやすい部位です。猫背であったり、スマホやPC作業の長時間化により手先を使うことが多くなることも前腕を張らせる原因になります。リンパ浮腫以外にも硬さや張りを生んでいる可能性があるということは、患部の張りや硬さの内訳をどれくらいリンパ浮腫とそれ以外に振り分けられるのかを考える必要があるということです。

リンパ浮腫以外に硬さを生んでいる可能性がある素因としては、筋活動低下(抑制)による神経活動亢進、筋過活動による神経活動低下、滑走性低下による神経活動低下や亢進、関節可動域低下による神経機能低下など、様々に考えられます。このうち、滑走性低下や関節可動域低下はリンパ浮腫からも起こり得るものなので、リンパ浮腫へのアプローチと両方向に行うとより改善が速くなると考えられます。
ここで少し補足すると、神経というのは脳や脊髄などの中枢神経や筋肉などへつながる末梢神経だけでなく、全身に張り巡らされています。全身のネットワークに重要な働きをもたらす1つが神経です。

やや難しい言葉をたくさん使いましたが、
まとめると、神経の状態がアンバランスになっているときは筋が硬くもなるし柔らかくもなる、ということです。そして、筋肉やその周辺の硬さは、神経活動が亢進していても低下していても起こり得ます。

前談が長くなりましたが、この「硬い」という状態と神経の状態への理解が鑑別をする上でとても重要なので説明をしました。

さて、ここで少しお気づきの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この神経状態のアンバランスさで起きている「硬さ」をまずは排除することが、術後リンパ浮腫の患部の硬さの内訳を見分ける第一歩となる*というのが、このブログのポイントです。

神経アプローチをすることで、筋肉やその周辺の張りや硬さを減らせたとしたら、その患部の「硬さ」や「張り」は全てが浮腫によるものではないということが判断できますよね。
浮腫の量とは別で、硬さの鑑別ができるというのは徒手療法においてとても大切です。

圧迫用品の選定にも響きますし、硬い浮腫=良くない状態であることへの不必要な不安の解消にも繋がります。

圧迫を優先的に積極的に行う従来の方法も非侵襲的で、シンプルかつ効果的な方法です。
それに神経アプローチを加えることで、圧迫と同じくらい重要な”運動”を最大限にサポートできます。運動のための機能性をアップできるのです。

神経アプローチをすることで筋機能が高まれば(その人の正常状態になれば)、可動域が拡大するサポートにもなり筋活動量も高まり、リンパを流すための筋ポンプ作用も大きくなることが考えられます。
浮腫の硬さの鑑別にもなるだけでなく、術後リンパ浮腫の改善を速める可能性も高まるのです。

どのようにアプローチをするのかは、テキストでもお伝えできるのですが、とても小難しくなるので詳細は今回は控えたいと思います(専門書みたいな内容になってしまいます。笑)。

そこで、今回のテーマに戻ります。
神経状態の改善は構造面の改善であり、構造的な改善は神経状態の改善にもなるということは、リハビリがきちんとされていることが、むくみを悪化させにくい≒予防になるというアイデアを少しご理解いただけたでしょうか?

術後リンパ浮腫発症後の徒手療法アプローチとして、神経アプローチが浮腫の硬さの鑑別や治療スピードを上げる可能性があるのなら、その逆も然りと考えることも不自然ではありません。

あくまで、可能性の話でエビデンスがあるものではありませんし、ガイドラインのように確立されていることではありませんが、1つのアイデアとしてお見知りおきいただけましたら幸いです。
こんなアプローチもあるんだ、という一例に過ぎませんが、実際にBOSでは術後リンパ浮腫の患者様に対してこのような鑑別をして徒手療法を効果的に進めています。

最後までお読みいただきありがとうございました。